電車の中での一コマ
先日、息子と2人で電車に乗っていた時のお話です。
夕方の込み合った時間帯で車両の隅の方で立っていました。しばらくすると、近くで座っていた男性がぬっと立ち上がります。どうやら息子のために席を空けてくれいるようなのです。わざわざ大きなスーツケースも移動して。でも、特に「どうぞ」とも言われず、私達には背中を向けたまま。息子は横の座席が空いたものの、どうしていいかわからず立ったままです。
私も一瞬どうしようか考え込んでしまいました。お礼を言って息子に座るように促すか、いや、あちらの方が荷物も多く大変そうですし、感謝だけ伝えて、子供は立たせておくか?
男性には連れの女性の方がいらっしゃったようで、その女性と小声で何か話しています。
次の駅で停車した際、空けて頂いた隣の席も空いたのをきっかけに、その方に私からお礼を言って長男と並びで座らせてもらいました。男性も「どうぞ」と、にこっと息子に笑ってくれました。息子は、どぎまぎしたのか目を伏せてしまいました。
しばらくして、2人が降車されます。女性はお腹が少し膨らんでいて、妊娠されているよう。男性は女性の大きなリュックもかついであげていました。そして、降り際。私が息子と目くばせしてもう一度頭を下げると、それより早く男性の方から、長男に向かって大きな声で「じゃあな、バイバイ」と笑顔で手を振ってくれました。息子、またまたびっくり。慌ててきちんとお礼も言えていないないと思いますが、その様子も男性は穏やかに見てくれていました。
何だかとてもほっこりして嬉しかったです。
お礼や挨拶をしなければならないのは分かっているけれど、恥ずかしさや緊張でなかなかできない長男。ポーカーフェイスなので、周囲からは理解されにくいこともあります。お礼や挨拶ぐらいしっかりしつけるよう、親である私にも視線が投げかけられます。
でも、あの男性は全部を受け入れてくれたように感じました。外見はこわもてな感じの方だっただけに、そのしぐさと笑顔はとても意外でした。一瞬の出来事でしたが、息子と心の中で交流してくれたように思いました。ひょっとしたらあの男性も小さい頃はシャイで人と目が合わせられないタイプだったのかもしれません。息子も将来、あんな風に成長してくれるかもしれないなー。いや、きっとそうなる、そんな気がして嬉しくなった出来事でした。